韓国映画『地球を守れ!』

つまらないタイトルだけど、この映画はスゴイです。
猟奇的な彼女』というちっとも猟奇的ではない映画もあったが、こっちはホントに猟奇的。楽しくハッピーな韓流コメディと勘違いすると大変な目にあう、ブラックなコメディ(?)だ。

宇宙人が地球を侵略しているという妄想にとりつかれた主人公が、「アンドロメダ星人の」化学工場の社長を誘拐し、奇怪だがものずごく痛そうな拷問を加えるというのが話の始まり。拷問を加えるのは、メガネをはずした「GOD SAVE THE すげこまくん」みたいなひ弱で神経質そうな青年だ。一方、意味不明の尋問に目を白黒させ、悲鳴をあげるのは、いかにも権力者といった風情の中年の社長(警察庁長官の娘婿という設定)。これだけでもカゲキハ的心情の琴線にふれる作品なのはお分かり頂けるだろう。

これ以上は明かせないが、ストーリーが予想もつかない展開を見せるとともに、この奇怪な暴力劇は独特の暗喩をはらんで広がり始める。軍政時代の(ひいては日帝時代の)歴史の見直しを進める今の韓国だからこそ、出てきた映画ではないかと思う。

それにしても、主人公を演じるシン・ハギュンがとにかく本当にすばらしい!ジェームス・ディーンに憧れて俳優になったとどこかで読んだが、この映画での切ない演技で、彼は猟奇界のジェームス・ディーンになったと言いたい。意外としぶとい社長をときにコミカルに、ときに憎たらしく演じるペク・ユンシクもいい。

モスクワ映画祭最優秀監督賞や、ブリュッセルファンタスティック映画祭大賞などを受賞したが、興行的には失敗したとのこと。確かに悪趣味だし痛すぎるから一般受けしないのは当然でしょう。でもぼくの友人たちにはぜひ観て欲しい映画。心臓の弱いひとにはお勧めできませんが。

「地球を守れ!」(韓国 2003年)
監督:チャン・ジュヌアン
出演:シン・ハギュン ペク・ユンシク

公式HP(韓国語。面白い。音声がついてます)
http://www.sidus.net/movie/save_g/default.html