韓国の書店

旅行が楽しくて仕方なかった若いころにはちっともそう思わなかったが、韓国の街中は確かに日本と似ている。外国を歩いているという非日常感がない。ところが文字だけが読めないわけだ。いわゆるハングル酔いというのはこの距離感のつかみ難さから来る混乱を言うのだろう。

大手の書店に入って驚いたのは、そこかしこで「座り読み」している人がいること。老若男女問わず、である。そういえば電車のなかで堂々と携帯で話している人も多かったが、公衆道徳が崩れた結果というわけではなくて、もともとそういうものなのだろうと感じた。社会によって、何を不愉快に思うかという基準は違うという当たり前の話だ。

平積みコーナーの一角に「ゲバラ本」を何種類か見つける。他のどの書店でも見たので、ゲバラブームらしい。他社の本に対抗して「ゲバラカレンダー」をオマケにつけている版元もあった。友人にお土産で買って帰ったが、なかなか出来がいい。この版元は韓国や世界の抵抗者や活動家の評伝をシリーズで出している。義烈団の金元鳳の評伝は表紙がかっこよかった。巻末の広告によれば大杉栄もあるようだったが、実物は見なかった。大手の書店では、左翼っぽい本が日本より多いように感じられた。