中国雑録

壁の中の自由
「与えられた自由な言論空間でいうと、日本は中国より広いです。ただ、日本の自由な空間は、どうも壁のようなものに囲まれていて、押しても押してもなかなか広げられない。一方、中国での空間は狭いのですが、それはネット袋みたいなもので、押したら十分な空間になり得るんです。だから日本では、「自由」は名詞のようなものです。与えられた自由。しかし、そもそも与えられた自由は自由と言えるのか、私は疑問を持っています。中国では「自由」は動詞のようなもので、「自由」とは、自由になる、自由することを意味します。それは、日本ではなかなか理解されないような気がします。」

(『軍縮地球市民』2006年夏号「日本と中国の狭間から〜中国人留学生座談会」より中国人留学生の発言)


中国の様々な社会運動
最近の日本では、中国の知識人や民衆が何を議論し、何を行動しているかについての関心が、かつてないほど低いのではないかと思う。書店には中国共産党支配の暗黒を告発する漫画本が山積みになっているというのに。実際には、労働運動から農村運動、環境保護運動まで、中国では様々な社会運動が存在し、また現在の「社会主義市場経済」について、様々な議論が展開されている。
とりあえず最近目にした資料をおすそわけしたい。

「中国における労働争議(韓東方インタビュー)」(地域・アソシエーション研究所HP)
http://www.ne.jp/asahi/institute/association/newsletter/20060201/article_1.htm

韓東方は天安門事件の際、広場で結成された自主労組の活動家で、現在は香港で「中国労工通信」(http://big5.china-labour.org.hk/public/main)を主宰している。ごく普通の労働者だった彼が、天安門事件の渦に巻き込まれていった顛末も面白いが、香港に身をおきながら大陸の労働運動にとって広い意味で「メディア」の役割を果たしている現在の活動も興味深い。

このインタビューを翻訳掲載している「地域・アソシエーション研究所」(どういう人たちかよく知らない)HPの「海外記事紹介」には、中国関係の記事もあり、「静かに広がる中国の環境NGO」「私有財産保護をめぐって」などが面白かった。特に後者は「私有財産権保護のための憲法改正に反対する」という大学教授の議論を紹介している。「西側」の先入観からは耳を疑うような話だが、前回紹介した汪暉の議論を踏まえれば、その文脈が理解できるのではないかと思う。
http://www.ne.jp/asahi/institute/association/older_200610/index.htm
地域・アソシエーション研究所HP

「ポスト〈東アジア〉」(作品社)には、中国農村問題についての温鉄軍の対談が載っている。温鉄軍は、「三農問題」という言葉を提起した経済学者で、農業政策の現場に長年関わった経験と、諸外国の農村の視察や討論から、農村再建の道を模索している。最近では「晏陽初郷村建設学院」という農村再建のためのNGOを運営している。