韓国で何かが始まっている。

韓国で、アメリカ産牛の全面解禁に反対する10〜20万人規模のデモが続いている(日本は今のところ生後20ヶ月以上と危険部位の輸入は禁止しているが、李明博危険部位以外の全面解禁をアメリカと合意した)。5月半ば以降、連日連夜、デモとキャンドル集会が途切れることがない。日本のマスメディアはあまり大きく伝えていないが、隣国で「何か」が始まっていることは確かだ。日本の、とくに運動圏の人々はもっと注目してほしいと思う。その「運動の質」は、かつてないものだ。

まず、運動の口火を切ったのは中高生であり、野党や運動団体ではなかった。
4〜5月、中高生の間で、ネットや携帯メールを通じて狂牛病への不安が猛烈な勢いで(非科学的なデマも多かったらしいが)語られ、彼らが街頭に飛び出したのである。大人たちは彼らの突然の登場に驚き、週刊誌は軒並み「なぜ子どもたちは街頭に出るのか」といったタイトルで特集を組んだ。中高生のスローガンは「私はまだ15年しか生きていません」とか「一緒に生きよう!大韓民国」などであった。

連日のソウル中心部でのロウソク集会運動はその後、大人に拡大し、最近はソウルで連日、10万人規模の集会が続いている。中高生の運動から広範な大衆の運動となったのだ。李明博の支持率は2月就任時の50%から20%に下がった。
自然発生的で不定形なこの運動の特徴が、「レイバーネット」などの報道から読み取れる。

◆時間無制限。朝までやっている。
◆街頭でのアメーバ的な動き方。
◆統率組織がなく、個々人の参加。現場で議論しながら動く。
◆徹底した非政治性(政局や組織への無関心)。
◆既成野党や運動団体が追いついていない。かと思うと現場で統制しようとして反発を食う。
◆徹底した非暴力。

中高生の怒りの背景には、狂牛病への不安のほかに、李明博の教育改革(徹底した英語教育など)への反発があったのかもしれない。そして市民にとっては、牛肉輸入に止まらず、大運河構想や、一層推し進められようとしている新自由主義など、李明博政権への拒否そのものが表現されるようになってきている。

集会では「大韓民国憲法第1条の歌」が歌われている。「大韓民国は民主共和国である。すべての権力は国民から発する」という第1条の条文を歌うもの(ちなみに日本国憲法第1条も「君が代」という歌になっている)。警官隊の「代表者は皆に解散を促してください」という放送には「みんなが市民で、みんなが代表だ」と言い返しているそうだ。

6月10日(火)、全国で100万人を集める大集会が予定されているらしい。だが、李明博と保守派は、この運動を「親北朝鮮勢力の陰謀」に結びつけようと必死だ。非暴力を貫いてきたキャンドル集会でも、警察車両の窓ガラスを破壊するような動きも一部ででてきたらしい(運動内部では「警察側のスパイの犯行」と議論されているようだ。おおにありうる話だとは思う)。

火曜日がひとつの山場になりそうだ。次回はこの運動の内外で語られている生き生きとした議論を、いくつかの日本語ブログから紹介したい。



レイバーネット内「韓国の労働運動」
http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/korea_news